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『心音の森の妖精物語』第8話 〜奪われたココロ〜(201.02.08.放送)

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※2. 放送時間の都合によりシナリオの一部を省略しています。
《作・絵》佐々木心音
《語 り》佐々木裕子
《音 楽》CO906.
《声の出演》
ココネ:佐々木心音
シータ:佐々木裕子

『心音の森の妖精物語』第8話 〜奪われたココロ〜(オリジナル・シナリオ)

森の妖精ココネは、ものすごいスピードで空を飛んでいました。
心を奪って生きる、ヌボーンからこの森を救うために。
『大丈夫。私には、沢山の仲間が居る。』
ココネは、そう自分に言い聞かせました。

しばらく森を進むんだココネは、ようやくヌボーンを見つけました。
静かに進むその様子は、まるで何かを狙っているように見えます。
するとその先から、話し声が聞こえてきました。
それは、鹿の“シータ”と銀杏の木の“なんちゃん”でした。
『シータ!なんでここに居るの!?』
ココネは驚きました。シータは、お婆ちゃんの森に居ると思っていたのです。
「ココネ〜!森にカマクラが出来たって聞いたから、戻ってきたんだ!」
シータは、いつもと変わらず陽気に答えました。
『そうなのね…シータ、とにかく逃げて!今、あまり説明している時間がないの!』
ココネは、大きな声でそう言いました。
「え?…ココネどうしたの?なにかあったの?」
シータはきょとんとした顔をしたまま、動きません。もう、すぐそこまで、ヌボーンは、近づいて来ています。
『お願い、シータ!そこは危ないの!逃げて!』
ココネは必死に言いました。するとシータは、気配を感じたのか、後ろを振り替えりました。
黒いドロドロした固まりが、自分に向かって動いてきているのです。
シータは、「わぁっ!」と声を上げました。ですがシータは、逃げようとしません。
「なんちゃんは!?ぼく、なんちゃんを置いてなんか行けないよ!」
なんちゃんは、シータの親友です。でも、銀杏の木です。動くことは出来ません。
「シータ、私は大丈夫だから、早く行って。」
なんちゃんは、そう言って葉っぱで風を起こし、ヌボーンの動きを止めました。
なんちゃんの風と、ヌボーンの黒い沼は、互いに一歩も引こうとしません。
それでもシータは、なんちゃんから離れようとしないのです。
「いやだ!」
その姿を見たココネは、シータに向かって歌を歌い始めました。
心ある者にだけ使える、魔法の歌です。すると、シータの体はふわっと浮き始めました。
『これで大丈夫。地面に足がついてなければ、ヌボーンは何も出来ないわ。』

するとその時です。なんちゃんの風が急に弱まりました。
「なんちゃん!がんばって!!!」シータは必死に声をかけています。
しかしヌボーンは、そのほんの一瞬でなんちゃんに覆い被さりました。
「なんちゃーーーーーん!!!!!」
シータは叫びました。思いっきり叫びました。
しばらくすると、ヌボーンが動きを止めました。そうして静かに、沼へと戻っていくのです。
そこに残されたのは、枯れ果てたなんちゃんの姿でした。
なんちゃんに、もう水分はなく、カラカラに乾いています。
ココネはそのとき初めて、森の木は心を奪われると枯れてしまう、という事を知りました。
『なんちゃん…命をかけて、シータを助けてくれたのね…』
「わあーーーーーーっ」シータは泣き崩れました。
どんなに泣いても、なんちゃんは話しかけてくれません。
いつもシータに優しく微笑むなんちゃんは、もうないのです。
ココネの頬にも、涙がつーっと伝わりました。
すると、ココネの手のひらに一枚の花びらが舞い降ちてきました。ほんのり優しいピンク色の花びらです。
『え…?今は、冬なのに…なんで?』
ココネが、空を見上げると、少しだけ青空が顔を出していました。

作:佐々木心音


FM-FUJI『心音の森の妖精物語』 by 富士見高原リゾート

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