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『心音の森の妖精物語』第1話 〜本当のココロ〜(2013.12.07. 放送)

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※2. 放送時間の都合によりシナリオの一部を省略しています。
《作・絵》佐々木心音
《語 り》佐々木裕子
《音 楽》CO906.
《声の出演》
ココネ:佐々木心音
シータ:佐々木裕子

『心音の森の妖精物語』第1話 〜本当のココロ〜(オリジナル・シナリオ)

八ヶ岳に“富士見高原”という、それはそれは緑に囲まれた場所がありました。
人々は、体を癒し、心を癒す場所として訪れるのです。
そこに、誰も足を踏み入れたことのない場所があるとは知らずに...。
これは「創造の森」のもっと奥、深い深い森の中の物語です。

ある時、一頭の鹿がもみの木の下で横たわっていました。
まだ幼い「シータ」という鹿です。
シータは、この森で一番古い木、もみ爺やに、なにやらお話を聞いてもらっているところでした。

「銀杏の木の「なんちゃん」がね、僕を無視するんだ。」シータは言いました。
「おやおや、あんなに仲が良かったのに喧嘩かね。ワシは動けんから、話を聞くことしかできないが...」
と、もみ爺やは答えました。
「聞いてもらうだけでいいんだ!あのね、もみ爺や、僕は何もしてないんだよ。」
シータがそう言った時、風に乗ってキラキラと音が聞こえてきました。

『シータ、また喧嘩したの?』現れたのは、この森の妖精ココネでした。
「ココネ!戻ってきたの!?」シータは目を輝かせて言いました。
『ええ、たった今、妖精の国から帰ってきたところよ』
「おかえり、ココネ。お前がいないから森のみんながさみしがってなぁ」
もみ爺やは嬉しそうに葉っぱを揺らしながら答えました。

妖精のココネは、他の皆にはない力がありました。
相手の心が読めるのです。相手の考えていることが聞こえてしまうのです。

『シータ、なんちゃんが怒っている理由がわかる?』
「そんなの知らないやい!だって僕は何もやってないもん。」
シータはぷいっとそっぽを向きました。
『そうなの、わかったわ。でもね、シータは、なんちゃんに体当たりして遊んだんでしょ?なんちゃん、とっても痛かったみたいよ?』と、ココネは話しかけます。

ここに来るまでに、なんちゃんの上を飛んできたので、その時に心の声が聞こえてきたのです。
「違うよ、いじめたわけじゃないんだ。僕はただ、一緒に遊びたかっただけなんだ。」
シータはそう言ってうつむきました。
『そうなのね。ねえシータ、ちゃんとごめんなさいって言ってないんじゃない?』
シータはまだうつむいたままです。
『じゃあ、私と一緒になんちゃんのところに行って謝ろう。きっと許してくれるわ。』
ココネがそう言っても、シータはまったく動こうとしません。

するとココネは、歌を歌いはじめました。この歌は、魔法の歌なのです。
シータの身体がふわっと浮いて、なんちゃんのいる方向へ動き出しました。
「僕、絶対謝らないよ!」
シータは自分の思うように動かない身体に、戸惑いながらそう言いました。
『大丈夫よ、怖くないわ。一緒になんちゃんのところに行こう?』
「いってらっしゃい、シータ。」もみ爺やも目を細めて言いました。

銀杏の木、なんちゃんのところに着いたココネとシータは、
『なんちゃん、なんちゃん!』と呼びかけました。返事はありません。
「なんちゃん、最近ずっとこうなんだ。僕が話しかけても、無視するんだ。もういい!僕は、お家に帰るよ。」そう言うとシータは、ココネに背を向けました。
その時ココネには、シータの心の声が聞こえました。

『シータ。本当はさみしいんでしょ?なんちゃんとまたいつもみたいにお話ししたいんでしょ?』
するとシータは泣き始めました。
「ぐすん。ココネ、なんでわかるの?僕、なんちゃんのことが大好きなんだ。だからお話できないのがさみしいんだ。無視されるのが悲しいんだ。」
シータは沢山の涙を流して言いました。

『じゃあ、シータ、なんちゃんにごめんなさいって言おう?悪いことしたつもりじゃなくても、やられて嫌なことはあるのよ。』
シータはこくん。と頷きました。
しばらくして泣き止んだシータは大声でいいました。
「なんちゃん!ごめんなさい。僕、なんちゃんと遊びたかっただけなんだ。そんなに痛いなんてわからなかったんだ。本当にごめんなさい。」

するとなんちゃんは銀杏の実をポトッと落として答えました。
「私こそごめんなさい。無視なんかして。ただ、わかって欲しかっただけなの。」
そして、シータとなんちゃんは目を見合わせ、笑い始めました。
「あはははっ。」

その姿を見て安心したココネは、キラキラと音を立てて、森の奥に飛んで行きました。
「ココネ、ありがとう!」
シータとなんちゃんは同時にそう言って、また笑いあいました。
その日の森には、笑い声とココネの歌が響き渡っていました。

作:佐々木心音


FM-FUJI『心音の森の妖精物語』 by 富士見高原リゾート

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