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『心音の森の妖精物語』第10話 〜変わらないココロ〜(201.03.01..放送)

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※2. 放送時間の都合によりシナリオの一部を省略しています。
《作・絵》佐々木心音
《語 り》佐々木裕子
《音 楽》CO906.
《声の出演》
ココネ:佐々木心音
もみ爺や:佐々木裕子

『心音の森の妖精物語』第10話 〜変わらないココロ〜(オリジナル・シナリオ)

森の妖精“ココネ”は、いつの間にか、クマのマーサと一緒に眠っていました。
『いけないわ、ちょっと眠りすぎちゃった。』
目を覚ましたココネは、マーサを起こさないようにそーっと飛び立ちました。

すると、森に立つ桜の木が、なにやら枝を動かしています。
『桜さん?まだ花を咲かせるには、早いんじゃないかしら。』
ココネは、そう話しかけました。けれども、桜の木は何も言いません。
『もしかして…もう遅かったの!?』
ココネが息をのんで見つめていると、桜はあっという間に花を咲かせていきました。
すると驚くことに、桜の花の色は、グレーでした。
心を奪って生きるもの“ヌボーン”によって、桜はすでに心を無くしていたのです。
そしてグレーの花は、静かに散っていきました。
『桜さん…!!』
(大丈夫、ゆっくり考えるのよ私…。)
『あ…!大変だわ!!』
そう言うと、ココネは眼を大きく開け、もの凄い早さで飛んでいきました。
この森の桜の木は、ココネの大切な友達である、もみの木の“もみ爺や”を囲むように立っていました。
なので、ヌボーンはもみ爺やのすぐ近くまでやってきているかも知れない、という事なのです。

ココネがもみ爺やのところへ行くと、寝ていたはずのマーサは、もう居ません。
『よかった、マーサを逃がしてくれたのね。』
「うむ。もうわかっておるとは思うが、そろそろヌボーンがこちらへ来るだろう。土が揺れておる。」
もみ爺やは、いつものように静かにそう言いました。
『もみ爺や!なんでそんなに落ち着いてられるの!?』
ココネは焦った声でそういいました。
「なぁココネ、ワシがこんなに長く生きられたのは、この森の木々たちのおかげなんじゃ。」
「土を伝ってなあ、この森に立っていた沢山の木が、ワシに栄養を与え、助けてくれた。」
「彼らの愛のおかげで、ワシは今まで生きられたんじゃ。」
もみ爺やは、微笑みながら言いました。
『え…もみ爺や?…どういうこと…?』
ココネの声は、震えていました。
「ココネや、今度はワシが皆を守る番じゃ。愛を与える番じゃ。」
ココネは何も言えませんでした。
もみ爺やにはもう、強く変わらない心があることが、わかったからです。
もみ爺やは、ココネを優しく抱きしめ、言いました。
「ココネ、この森を頼んだぞ。」

その時、黒いドロドロした液体のヌボーンはもう目の前まで来ていました。
気付いたココネは、ヌボーンを睨みつけました。
ですがその隣でもみ爺やは、そんなヌボーンに優しい声で言いました。
「ヌボーンや、久しぶりじゃのう。」
ココネは驚きました。もみ爺やは、戦おうとしないのです。
それどころか、この森にいる皆と同じように話をするのです。
「お前さん、ずいぶん辛い思いをしたんじゃないのかい?ヌボーンや、怖がらなくて良い。ワシはお前が大好きじゃ。」
すると、不思議な事がおきました。ヌボーンが止まったのです。
そしてもみ爺やは、優しく枝を広げ、ヌボーンを抱きしめました。
ヌボーンは、泣いているようでした。心が無いはずなのに、ココネには涙を流しているように見えました。
『もみ爺や…やっぱり、あなたはすごいよ…。』
ココネには、ただ見守る事しか出来ませんでした。
ヌボーンは少しずつもみ爺やに溶けていき、もみ爺やの木や葉っぱはグレーになっていきました。
そうして、静かに微笑みながら、もみ爺やは深い眠りにつきました。
心を奪い続けて大きくなったヌボーンは、まるで水たまりのように小さくなっていました。

ヌボーンの弱点は“優しく強い心”だったのです。
もみ爺やは、自分の命と引き換えに、ココネに教えてくれました。桜の木たちも、無事でした。
ココネは涙を拭う事も忘れ、ヌボーンの心と最後まで向き合う事を誓いました。
『もみ爺や、必ずこの森を守るよ。』
もう二度とこんな悲しいことがおきませんように…。

作:佐々木心音


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